ONE LOVEへのメッセージ


日本を代表する女優にして、チャンピオン犬を育てあげたドッグブリーダーという顔も持つ名取裕子さん。50個もの優勝カップを獲得した次長ことジジ(10歳)、その母である部長ことブブ(13歳)、名取家にきて1年足らずのコック長ことココ(1歳半)のメス3頭のミニチュアダックスフンドと、愛情に溢れた毎日を送っている。どんな人でも"オンリーワン"でいられるイヌとの生活は、何にも代えがたいことだとか。その特別な存在に私たちができることを、じっくりと語ってもらった。
『ONE LOVE』はみんなが持つべき「愛犬家精神」や「愛情」。
1つの愛情が、1つのマナーを生み、1つの共存を生む。
これが『ONE LOVE』の想いです。年間、約12万頭ものイヌが保健所で殺処分されている現代日本。そこで「ONE LOVE」では、プロジェクト第1弾として、「イヌ・ステ・ゼロ」運動をスタートしています。そしてこれからも、単なるペットブームに乗るのではなく、成熟した「イヌとの暮らし」を実現するための情報発信とDonation(寄付活動)を行っていきます。

ONE BRAND(以下、O.B.) 5年前に執筆されたエッセイ『犬の花道、女の花道』(集英社刊)ではブブとジジの母娘2頭でしたが、新しく仲間が加わっていたんですね。
名取 ココがやってきたのは今から1年ほど前。友人のブリーダーから「小さくて弱い子が生まれたので、里親を探してほしい」と言われたんです。見に行ったら本当に小さくて、食糞もあるし前足も広がっていて、トイレのしつけもできていなかった。本当に可哀想な姿でした。そのまま引き取って一生懸命しつけていたんですが、1カ月後に、今度は前足の尺骨が折れてしまって。当時、私は京都でドラマの撮影をしていたので、土曜日に東京に戻って入院先の病院に会いにいき、月曜日には京都に戻る生活をしていました。「1時間以上一緒にいられないなら、会うのはやめてください」と言われていましたし、毎回必ず2時間は抱っこするようにして…。
O.B. ココは名取さんがくるのを、待ち遠しく思っていたでしょうね。
名取 どうでしょう、このコは本当にギャングのような性格で(笑)。こんな小さな身体なのに、吠えたり噛み付いたりすごいんですよ。ココがやってきてから、ブブとジジも病気になってしまったくらいです。特にジジは、本当に我慢強くて性格がいいので、咬まれてもじいっと我慢しちゃうタイプ。ストレスで毛が抜けて、ハゲてしまったこともありました。それでも1年たって、ココも大分いいコになりましたね。
O.B. ブブはコルセットを着けているようですが、背骨がわるいんですか?
名取 持病でヘルニアがあって、ギックリ腰にもなりやすいんです。ですから坂道をゆっくりゆっくり登らせて極力、運動させるようにしています。ココも足が外向きに付いてますから、ウッドデッキで歩く練習をしているんですよ。ジジには胆石があるから、レシピに気をつけなければいけないし……。ココは生まれつき障害がありましたし、ブブもジジもシニア犬なので、食生活にもかなり気を配っています。
O.B. イヌは自分では、不調や痛みを訴えられないですものね。
名取 話せないからこそ、健康管理は本当に難しい。「ちょっとウンチが柔らかい」とか「食べてはいるけど、いつもみたいによろこんで飛び出してこない」とか、とにかくよく観察するようにしています。そうしないと、食事の内容を変えたり栄養を与えたり、臨機応変に対応ができなくなりますから。イヌといえども、ひとり暮らしの私にとっては特に、大事な大事な家族。その命は真剣に守らないといけないと思っています。地震が起きたときは私、イヌ以外には何も持たずに逃げると思うもの(笑)。
O.B. イヌたちにとっても、名取さんは大事な大事な存在でしょう。
名取 本当にそうなんですよね。こんなに健気で繊細な動物って、まずいないと思うぐらい。私は仕事柄、家を長期間留守にすることも多いんです。それでも帰ると、このコたちが一目散に駆け寄ってくる。「寂しい思いをさせちゃっているのは私なのに、なぜ帰ってくるとよろこぶのよ?」って、切なくなってしまいます。待たせたことよりも、会えたことのほうがうれしいのねって。ですから一緒にいられるときは、とにかく触って、とにかく話しかけるようにしています。「もう安心だからね」「本当に大事だからね」「上手だよ、かわいいよ」って、愛情を言葉で伝えるようにして。
O.B. やはり、きちんと言葉に出すことが重要なんでしょうか?
名取 そう思います。イヌは人間の感情を、頭ではなく心で理解している。とっても感情が細やかだし、気を使う生き物なんですよ。私が台詞を練習していて、声を荒げたりするともう大変。3頭そろってすっ飛んできて「大丈夫、大丈夫?」とばかりにペロペロなめてくれるんです。友人と電話をしているときもそう。切り際に「じゃあそろそろ」となるときのトーンの変化がわかるらしく、「もう切るの? 切るのね!?」って大変な騒ぎになりますし(笑)。私のその日の様子もすごくよく観察していて「今日はお化粧が濃いから、出かけちゃうな」とか、「大きなロケバック持ってるから、長くいなくなっちゃう……」とか、全部わかってるんです。地方に仕事に出かける前に、大きなカバンを出して用意しておいたら、ブブが入って出てこなくなっちゃったときもありました。
O.B. 「お願い、出かけないで」という無言のメッセージ。それは、かなり辛いですね。
名取 イヌの寿命を考えると、私たちの1日は5日間に相当するんです。1週間ロケにでかけると、1カ月以上会ってない計算になっちゃう。1カ月になると、半年近いんですよ。それだけの間、このコたちは我慢してるんだなって。
O.B. そうやってイヌの立場に立って考えることこそ、「ONE LOVE」活動の第一歩かもしれません。

名取 イヌは感情も命もある存在ですから。それに人に対する愛情は、本当に豊かで誠実。よくぞこんな存在を捨てたり、傷つけたりできるものだと思ってしまいます。金銭的に余裕がないとか、環境的に飼うのが無理になったとか、そういう話をよく聞くじゃないですか。でも、高価なドッグフードじゃなくても、1日1食でも、イヌはちゃんと対応してくれます。家のなかで飼えないならば、外でも大丈夫ですし……。習慣になれば、たいていのことには順応してくれるんですよ。イヌにとって、いちばん大事なのは「愛する飼い主とどれだけ一緒に楽しい時を過ごせるか」。一緒にいてあげるだけで、本当に一途に愛してくれるんです。見た目がどうであろうが、おカネがなかろうが、どんな性格だろうが、イヌにとっては飼い主がオンリーワンでナンバーワンの存在。そんなふうに思ってもらえるなんて、最高の贈り物だと思うんです。
O.B. イヌも飼い主も、お互いがオンリーワン。そんな関係、とても素敵です。
名取 そういう関係が築けないとしたら、原因は飼い主の知識のなさ。調子がわるかったり、わるいコだったりするのは、すべて飼い主のせいと思ったほうがいいんです。愛犬を「バカ犬」なんていう人もいますが、イヌがバカなのではなく、教え方がダメなんです。彼らは絶対に言葉をわかっていますから、とにかく誉めながらしつけないとダメ。しっかり愛情を持って、誉めて育てていけば、必ず幸せな関係が築けるはずなんですよ。
取材・構成/萩原はるな 写真/河合昌英 取材協力/恵比寿ガーデンプレイス
