ONE LOVEへのメッセージ


ドッグビヘイビアリストとして日本で活動を始めた下村拓哉さんは、大学卒業後に社会人経験を経て、イギリスへ留学しビヘイビアリストの修行を積みました。日本でもカウンセリングなどのサービスを行う傍らで、子どもたちを対象に犬と暮らす楽しさや命の大切さを伝える啓蒙活動に取り組みたいという意気込みを語っていただきました。
人と犬の明るい未来を作るプロジェクト ONE LOVE
日本では年間に44,783頭もの犬が殺処分されているという実態があります。(平成23年度 環境省発表)この現状に対して1頭でも多くの犬たちの命を救うために、動物保護団体への寄付や飼い主さんへの啓発、保護犬文化向上のための支援に取り組んでいます。
1人ひとりの小さな“ONE LOVE”を集めて大きな力にするために、私たちに出来ることから始めませんか。
ONE BRAND(以下、O.B.) 現在下村さんが取り組んでいらっしゃる「Dog Behaviourist」(ドッグ ビヘイビアリスト)の活動とはどういったものなのでしょうか?
下村 ドッグ ビヘイビアリストとは、簡単に言うと、犬の行動の意味を読み解き、人に伝える専門家のことです。犬の行動を観察して、想いを汲み取った上で、その犬に合った接し方やトレーニング方法を飼い主に提案していくのが、私たちドッグ ビヘイビアリストの役割です。
犬のトレーニングは、流派によって多少の違いはあるものの、基本的には人間の思い通りに犬の行動をコントロールしようとするケースがほとんどです。これに対し、私たちドッグ ビヘイビアリストは、人間と暮らす上で必要なルールを犬に理解させること、同時に、飼い主に犬の想いを理解してもらうことを目指しています。
日本ではまだあまり馴染みがありませんが、イギリスでは新しい犬との関係性を作る上で大切だと認知されてきた職業で、多くのビヘイビアリストが活躍しています。
O.B. ドッグ ビヘイビアリストは具体的に犬や飼い主とどのような関わり方をするのですか?
下村 ドッグ ビヘイビアリストがコンサルティングを行うのは、大きく分けて、①初めて犬を飼う人、②飼い犬に何らかの疑問や問題行動があり悩んでいる人です。いずれの場合も、まずはビヘイビアリストが自宅を訪問し、犬の飼育環境・飼い主との関係を確認することからコンサルティングをスタート。家族構成や、職業、犬と過ごせる時間の多寡など、飼い主の状況をヒアリングします。①のこれから犬を飼おうとしている人には、ヒアリングの内容を踏まえて、その人のライフスタイルに合う犬選びやトレーニング法についてアドバイスします。また、②の飼い犬に問題行動がある人の場合は、ビヘイビアリストが実際にその犬に会って行動を観察し、犬の「想い」を汲み取って、本来犬が何を考えているのかを飼い主と意見を共有していきます。その上で、問題行動を解決するための方法を提案し、飼い主が解決に向けて何らかのアクションを取れるようにアドバイスしていきます。
また、飼い主向けのコンサルティング以外にイギリスの動物愛護施設で働くドッグ ビヘイビアリストには、ある重要な役割があります。それは、捨てられた犬たちの査定です。
愛犬家が多く、動物愛護活動が盛んなイギリスでも、悲しいことに毎年かなりの数の犬が捨てられ、公共の保護センターに収容されます。収容された犬たちが新しい里親に引き取られる前には、一定のアセスメント期間が設けられているのですが、ビヘイビアリストはそこで犬たちの問題行動の有無、遺伝的な疾患の有無などを見極め、査定を行います。その結果次第で里親に引き渡せるか否かが決まり、中には残念なことにどうしても殺処分せざるをえないと判断されるケースもあります。問題行動がある犬については、ビヘイビアリストがリフォーム(=ケアやトレーニング)を行った上で新しい飼い主に引き渡すことになっています。
O.B. 素晴らしいお仕事ですね。下村さんがこういった犬にかかわる仕事に就こうと思われたきっかけは何だったのですか?
下村 僕はもともと大学卒業後、日本でコンサルティング系の企業に勤めていました。でも、どうしても大好きな犬に関わる仕事をしたいという思いが捨てきれず、思い切って辞職。24歳の時にイギリスに留学しました。子供のころから乗馬をしていたので、イギリス人が動物の訓練技術に長けていることや、動物を大切にするイギリスの国民性を知っていたので、留学するならイギリスと決めていました。
とはいえ最初からドッグ ビヘイビアリストになると決めていたわけではありません。漠然と「犬に関することならなんでも吸収しよう」と思い、まずは、イギリスの有名な動物愛護団体「ブル―クロス」でボランティア活動をしてみることにしました。ブルークロスは第一次世界大戦で怪我をした軍馬の治療のために設立された団体で、現在は馬だけでなく大小様々な動物が保護されています。僕がここで担当したのは、いわゆる問題行動をもつ捨てられた犬達のリフォームです。この仕事を通じて犬との関わり方や、犬のリフォーム方法について非常に多くのことを学ばせてもらいました。
同時にブルークロスを始め、イギリスの動物愛護活動のスケールの大きさに圧倒されました。なにしろブルークロスの施設は、僕が活動していた本部(=広大な牧場)の他に、国内に10カ所以上の施設があり、本部だけで数十名の有給スタッフが働いています。各施設には数百人規模の地域ボランティアが協力していますし、BBCなどでテレビコマーシャルも流れているので、知名度も抜群です。
O.B. 愛護団体というより、まるで企業のようですね!運営資金はどのようにして確保されているのでしょうか?
下村 詳しくはわかりませんが、大半は企業や個人からの寄付で賄われているようです。日本では聞いたことがありませんが、イギリスでは資産家が遺産を動物愛護団体に遺すというケースもよくあるようです。
それと、イギリスの動物愛護団体では、とても効率的に活動が行われていて、分業体制が整っていることが多いのです。ブルークロスのように資金調達専門のスタッフ(=ファンドレイザー)がいる団体も珍しくありません。どんな保護活動も、資金力がないと続けられませんから、非常に理にかなった運営システムだと思います。そもそも日本に比べてイギリスでは寄付文化が社会に根付いていますし、NPO活動そのものの歴史も長く、評価も高いですね。
逆に日本の愛護団体では、組織の規模が小さい分、スタッフ全員がケアやトレーニングそのものにかかりっきりになってしまって、資金調達は後手になってしまっている印象があります。
O.B. イギリスで動物愛護活動が高く評価され、活動への理解が社会に根付いているのはなぜでしょうか?
下村 まずは教育の力によるものが大きいと思います。イギリスでは愛護団体のメンバーやドッグ ビヘイビアリストのような動物の専門家が、小学校などに出向き、命の大切さや動物と暮らすためのルール等に関する講座を開きます。こういった取り組みが、子供らが動物愛護問題を自分たちの問題として考えるきっかけになっているのです。
次に、考えられる理由はイギリス人の国民性によるものです。イギリス人は自分や自分の家族に誇りをもつのと同じように、自分の犬に対し強い誇りをもっていて、また犬に敬意をもって接します。ですから当然ながら、犬の命を尊ぶ意識も高いのです。さらにトレーナーや ビヘイビアリストなど、犬にまつわる仕事をする人も、みな自分の仕事に誇りを持ち、「犬と暮らす生活文化を次の世代に伝えていこう」という使命感をもっています。
もちろん、イギリスも最初からこうだったわけではなく、歴史的にみれば動物たちが大切に扱われなかった時代が長かったのです。近年になってやっと、長年の教育や啓もう活動の成果が実ったのだといえるでしょう。
O.B. なるほど。日本でも、イギリスのように教育や啓もう活動を通じて動物愛護の機運を高めていければいいですね。下村さんは今後、ドッグ ビヘイビアとして日本でどのような活動をされる予定ですか?
下村 現在は首都圏を中心に、個別訪問による会員制「犬の特別ケア」(コンシェルジュサービス)を行っています。具体的なサービス内容は、定期的に犬を飼っていらっしゃるお客様のご自宅、もしくはご指定の場所に出向き、犬の行動観察とトレーニングのアドバイス等を行うこと。また、日頃お忙しい皆様に代わって『信頼できる犬の専門家』として、ドッグオーナーのニーズに合わせたケアサービス(ドッグウォーキングやシッティングなど)を展開しています。皆様の大切な愛犬を、犬との生活に関するあらゆる悩みにお応えするパートナーとして、お役に立てればと願っています。
僕が仕事を通じて伝えたいことは、なんといっても、『犬と暮らす楽しさ』です。僕自身の原点も幼いころに飼っていたセナ(ゴールデンレトリーバー)と過ごした日々です。彼は本当に生まれながらに落ち着いた素晴らしい犬で、セナのおかげで僕は楽しい時間をたくさん過ごすことができました。言葉は通じなくてもお互いが信頼し合い、理解しあえることを知ったのもセナのおかげです。こういった犬との成功経験を多くの人に味わってもらうことも、僕たちドッグ ビヘイビアリストの大切な役割だと思っています。成功経験をもつ人が増えれば増えるほど、犬がもっと尊重され、もっと愛される社会に近づけるはずですから。
その意味で、犬との暮らしに満足感・または自信を持っている人にそのライフスタイルの素晴らしさを聞き、犬が好き・一緒に暮らしている皆様に伝えられる機会がもっと増えればいいなと思っています。僕も先程お話ししたイギリスのように、子どもたちに犬と暮らす楽しさや命の大切さを伝える啓蒙活動にぜひ取り組んでいきたいですね。